子供の歯並びについて、日頃の「口腔機能」が深く関わっていることを知っていますか?
歯並びの悪さには、見た目の問題だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性のある原因が潜んでいます。
アレルギー性鼻炎などによって鼻が詰まりがちな子供は、口呼吸になりやすい傾向があります。この口呼吸が長く続くと、頭蓋顔面の発育障害を引き起こす可能性があります。具体的には、上顎が過剰に成長してしまう「上顎垂直過成長(ガミー)」という状態が見られることがあります。
舌の正しい位置は、上顎の天井部分にピタッとついている状態です。しかし、舌が低い位置にある「低位舌」も、口腔機能発達障害の一つとされています。低位舌は、顎の成長を妨げ、歯が並ぶスペースが足りなくなる「狭窄(きょうさく)歯列」を引き起こす原因となります。
これらの原因は、結果的に「顎が小さい」「顔が細長い」「ガミースマイルになる」といった見た目の問題に繋がるだけでなく、口呼吸や低位舌といった口腔機能発達障害は、睡眠障害にも関連があるというデータがあります。
ADHD(注意欠如・多動障害)の症状がある子どもの73.3%に睡眠障害が見られるという報告もあるほどです。これは、子供の健やかな成長にとって見過ごせない問題です。
従来の矯正治療が「悪い歯並びを整える」ことに主眼を置いているのに対し、予防矯正(ORT矯正)は、これらの根本原因に対処することで、歯並びの改善を目指します。
予防矯正の最大の目的は、子供の口腔機能が正しく成長し、歯が自然に綺麗に並ぶ土台を作ることです。
具体的には、マウスピースの装着に加えて、保護者の方と一緒に毎日行うトレーニングが欠かせません。さらに、月に1〜4回、歯医者へ来院していただき、一緒にトレーニング方法を習得していきます。
口腔機能が正しく成長すると、それに伴って顎(あご)も適切な大きさに発達します。これにより、永久歯が自然に並ぶための十分なスペースが確保され、将来的に抜歯をすることなく歯並びを整えられる可能性が高まります。
予防矯正は、10歳ごろまでしかできない「成長発育」に介入するという点で、従来の矯正治療とは大きく異なります。従来の矯正治療が、小さく成長してしまった顎に無理やり歯を並べるために抜歯が必要になるケースがあるのに対し、予防矯正は、口腔機能の改善によって下顔面が正しく成長することを目指します。
予防矯正は「歯を並べる」こと自体を直接の目的としているわけではありません。「顎を正しく成長させた結果、歯が並ぶスペースを作る」という考え方です。
これにより、ほとんどの子供が自然に綺麗な歯並びを獲得できます。もちろん、100%ではないため、必要に応じてマウスピース矯正による最終的な仕上げを行うこともあります。
正しい予防矯正には、口腔機能支援士や管理栄養士、保育士といった多職種が連携し、子供をサポートできる環境が必要であり、歯並びや口腔機能について早期の介入が、健やかな未来に繋がります。
子供の将来のため、早めに専門知識のある総合歯科医院に相談してください。